前に進もう

びっくりなことが起こった。

 

思うことが沢山あった母に対して、

感謝の気持ちを伝えられた。

そんな話をするつもりじゃなかったから、

ただただびっくりしてる。

 

実家に帰った帰り、

母と2人でお寿司を食べに行った。

お寿司なんて久しく食べてないからと言って、

近所の店へ。

 

きっかけは、母の姪っ子についての話だった。

姪っ子はまだ学生だがアルバイトをして、

自分で自分の生きる道を切り開こうとしている。

そんな姪っ子に対して、

母は「女の子なんだからそんなに自分でなんでもやらなくても…」といつもの調子で話していた。

 

母の中で、女性の生き方は二つしかない。

男性と肩を並べて働くバリキャリ系ウーマンになるか、結婚して専業主婦になるか、どちらかだ。

母は大学を卒業した後すぐに結婚し、専業主婦になった。

 

私自身も、母と同じように専業主婦になるだろうと思って育てられてきた。

母曰く、この子はバリキャリ系ウーマンにはなれないと思い、"専業主婦ルート"に進むよう育ててきたのだと言う。

 

「あなたは、何もできない子だから。」

 

子どもの頃から母にずっと言われてきた言葉だった。

気がつけばそれが自分の中の生き方の軸となってしまい、

後々自分を苦しめることになった。

 

そこから、自分の育てられ方について思っていたことを母に話した。

母が兄弟につきっきりだったことで寂しい思いをしたこと。

寂しさを相談できる相手がいなかったこと。

心の拠り所だった私のオタク友達を、

気持ち悪いと言われて傷ついたこと。

家に居場所がなかったこと。

そういうことが重なって、心の病になってしまったこと。

そして、学校に行けなくなってしまったこと。

母は母で、思春期で揺れ動く私と向き合うのは大変だっただろう。

その状況が、益々私を"何もできない子"に追い込んだ。

 

結局、母の思うようなルートには進めていない。

いまだに道を見つけられないでいる私が、

この先どうなるか分からない私が、

偉そうなことは言えないけれど、

選択肢は、きっと二つだけじゃないということを伝えた。

 

母の生きてきた時代と今とでは、状況は変わってきている。

母もそのことを、少しずつ理解し始めているようだった。

今となっては、ルートを決めて育てなかった方が良かったのかもしれない、とも言っていた。

い、今さら〜笑。

 

もう過去には誰も遡れない。

仮に母が私を"バリキャリ系ウーマンルート"にすべく育てたとしても、

私がバリキャリ系ウーマンになっていた保証なんて、どこにもないのだから。

 

育て方にも、育てられ方にも、正解はない。

 

ただ、

人にやってもらったことに感謝をすること。

人に対して失礼のないようにすること。

食事のマナーなど、

社会に出て、母に教わったことが役に立ったこと。

結婚を控える兄弟と話をして、2人ともそういったことを母に教えてもらえて感謝しているということを、母に伝えられた。

母は喜んでいた。

 

これからどう生きていけば良いかまだ分からないでいる。

とりあえず白骨化死体になって発見だけはされないようにしますと言った。

母は笑っていた。

 

まだまだ先は見えてこないけれど、

前に進もうと思った。