コンビニ人間

今流行ってるらしい(テレビを見ていないのでよく分かってない)芸人さんが、youtubeでおすすめの本を紹介していると友達が教えてくれた。

 

早速見てみると、その中に

村田沙耶香さんの「コンビニ人間」があったので、読んでみた。

 

話が面白くて、あっという間に読み終えた。

その感想を、メモがてら。

 

コンビニで18年間アルバイトをする36歳の主人公の女性が、社会との関わり方、他者との関わり方を自分視点で描いた作品。

 

"普通"と呼ばれる世の中を"枠の中の世界"として、

その世界を圧倒的な外の世界から見ている主人公。

その表現は大変に無機質で、究極の客観視とも

言えるけれど、それが不気味で、引きつけられる。

 

"普通"の人の感覚が分からない主人公。

けれども、"普通"の人が"普通"でない人を

どんな目で見ているかを冷静に見つめ、理解しているあたり、

"普通"の人の感覚が全く分からないわけじゃない。

ただ、自分が"普通"でないことに対する意味や意義を考える必要性を持たないところが、やっぱり"普通"ではないのかもしれない。

 

コンビニの様子や主人公に関わる人々の描写が、はっきりとイメージできるほど細かい。

特に人の表情、声のトーン、動きや感情は細かく描かれていて、筆者は普段からよく人を見ている人なんだな、と思った。

 

18年間コンビニで働きつづけた彼女は最後、

コンビニのバイト店員としか生きられないことを悟り、コンビニ店員で居続けることに生きる意味を見出す。

作中に何度も、"36歳、独身、まだコンビニのバイト店員"という表現が出てくる。

"普通"の世界から見た主人公は社会のお荷物であり、負け組とも言われていたけれど、

18年のバイト経験によって得た知識や生きがいを糧にコンビニで働き続ける彼女は、本人がそれを理解しているかは別として確かに社会の一員であり、立派に社会に貢献している。

 

でももしかしたらこの

"確かに社会の一員であり、社会に立派に貢献している"

という見方自体が、

彼女にとっては"普通"に当てはめようとする側の人間の見方なのかもしれない。

 

 

主人公が人に対して感じていたことは、

昨日の親戚の集まりの時に私が感じたことと、少し似ていたから、ちょっと笑っちゃった。

大きな丸いカゴの中にみんなが入っていて、

わいわいがやがや、盛り上がっている。

それをカゴの外で、じーっと見つめているような感覚。

自分を置いて、ものすごい速さで会話は進んでいく。

話の内容はもう耳に入ってこないから、

誰が何をどんな風に食べて、飲んでいるかをただ

じーっと観察して、帰ってきて、日記としてメモしておく。

 

この本を読んだのが昨日の今日だったから、

共感できるところがあったのかもしれない。

読んで良かった。

 

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)