ある訪問員さんとのやりとり

とうとううちにも来てしまった。

NHKの受信料支払い依頼が。

 

受信料はNHKを観ている世帯だけが支払うものだと思っていたら、

一世帯ごと、必ず支払うことになってるのだそう。

受信料の仕組みがよく分かっていなかった私は、

今まで契約をしていなかったのだ。

 

訪問員の方は終始にこやかで、受信料の仕組みについて淀みなく説明してくれた。

日々、沢山の家を回って歩いてるんだろう。

やり取りがとても慣れた様子で、

一昨日スマホを乗り換えた時に対応してくれた店員さんみたいだった。

スマホの乗り換え - ひとりごとと

 

テレビを観てないのに支払う決まりになっているなんて、どうも納得がいかない。

テレビ放送だけに受信料が使われてるわけではないんだろうけど、

日々の暮らしに照らし合わせてみれば使ってない携帯代を払うようなもの。

 

こちらには選ぶ権利がない。

それだけで、窮屈だった。

ぶっこわしたくもなるわね。

 

そんなことを、淡々と訪問員さんに話してみた。

訪問員さんの反応は冷静だった。

支払いに納得のいかない世帯が多い中、

自分達は受信料支払いのお願いに回らなければならない。

とにかく納得して頂くまでお話させて頂きますと言っていたが、こちらも渋々申し込みをしているものだから、

すっかり"渋々フィルター"がかかってしまった。

 

訪問員さんに、退路はない。

一度訪問したら必ず契約しなければならない。

"退路のない訪問員さん"の気持ちを聞く機会は滅多にないと思ったから、色々質問してみた。

 

もし、どーしても。

どーーーーしても支払いたくありませんて言われることはありませんかと聞いてみる。

 

あります。

しっかりお時間を取って、ご納得頂けるまで、

お話させて頂きます。

との答え。

 

じゃあ払わなくて良いですよって言えないんだから、そう答えるしかないんだろう。

(と、渋々フィルターのかかった私は思った)

 

納得が出来ないと思う人が多い中、契約をしてもらわないといけないのは大変な仕事だと思うけれど、

なぜこの仕事をやろうと思ったのか聞いてみた。

 

訪問員さんは25歳の男性で、この仕事をする前は飲食店で働いていたのだという。

飲食店で働いていると、世の中の休みが稼ぎ時。

まとまった休みもなければ、家族と過ごす時間もない。

同僚が結婚を機に飲食業から離れていく中で、

自分も将来休みもなく、家族とも過ごせないかもしれない環境に身を置き続けることに疑問を抱き、今の仕事に移ってきたのだという。

本当の話かどうかは分からないけど。

(と、渋々フィルターのかかった私は思った)

 

訪問員として各世帯を回るのは会社に入ってからの研修のひとつで、職位が上がると自分の好きなことが出来るらしい。

訪問員さんの目は明るいながらも落ち着いていて、

内側に野心を感じて取れた。

時には訪問した先で胸ぐらを掴まれることもあるのだという。

本当の話かどうかは分からないけど。

(と、渋々フィルターのかかった私は思った)

 

訪問員さん本人に罪はない。

言われもない攻撃を受けたり罵声を浴びせられたりするこの仕事。

それをこの落ち着いた目で、慣れた態度で取り組む彼の内側には、

何かこの先目指すべき道がはっきりと見えているんだろうなと思った。

 

最後の最後になって、

ちょっと性格悪いけど、茶化すつもりで聞いてみた。

私の部屋の2つ隣の人の玄関の扉には、

あのぶっこわす!でお馴染みの方々が作っている

"NHK撃退シール"が貼られているのだ。

 

「あのおうちの方、撃退シール貼ってますけど、撃退されましたか?」

 

すると訪問員さんは笑いながら

「あの方、払ってますよ!」

と一言。

 

本当かどうかは、分からないけれどね。

(と、渋々フィルターのかかった私は思った)